2005年10月28日

『氷点』:人間の「原罪」とは何か?生きているだけで罪とは言わないけれど、自分の存在が人を苦しめる場合もある

氷点
『氷点』 (上)/三浦綾子著

人の本棚を見るのは楽しい。
その人の人となりや、性格というものがとてもよく反映されている。
本棚を見て「あーこの本読んだの?これ良いよね」みたいな会話ができることはとても楽しい。
脈絡も無く、いきなり「あの本読みました?」と聞くことは結構しにくいものなのだ。

でも、我が家の本棚を見られることは、とても恥ずかしい。
あんまりジロジロ見ないで欲しかったりする。

でも、我が家に来る人はたいてい「すごい本ですねぇ」という感想を漏らす。

僕の先入観で、「読書家=頭良い人」という固定観念があるので、それを言われて悪い気はしない。
買ったは良いものの、一度も開いたことも無い本も結構あるんだけれど…。

正直僕の趣味の1つは読書です。
読書が趣味な人は多くて、ツワモノになると一年で300冊くらい読む人もいるらしい。
僕はそんなに読むのが早くないので、そんなにすごい量の本は読めないけれど、本から学んだことや、勇気を貰ったことは数知れずたくさんある。

こんなことを話すと、幼少期から読書家みたいだが、そんなことは全くない。
ぶっちゃけ言うと私は20歳になるまで、1冊として本を読んだことはありません。
恥ずかしながら小中高と宿題をしたことがありませんから、国語の教科書ですら読んだことはありません。
夏休みの読書感想文などもしたことが無いのです。

それが突然何を思って読書家に転換したかと言うと、まず新聞配達の住み込みという仕事に就きましたから、新聞を読むことはタダでした。
日本の主要な5大紙全てを読むというのが日課になりました。

そして突然、早稲田大学の受験を決意しまして、入学試験で「現代文」、所謂国語の試験がありましたので、活字に慣れておくことが必要になりました。
受験勉強には、何かしらのテクニックはあるのですが、読書家はすべからく現代文が得意だったのです。

もともとの僕の本への登竜門は「受験勉強対策」という邪な考えからです。

それで何を思ったのか、いきなり上記の小説『氷点』と読んだのです。

団塊の世代において「氷点」という小説はあまりにも有名です。しかし今の大学生でこの小説を読んだりするのでしょうか。
なんでいきなり私がこんな本を読んだのか今を持って不明です。

1964年、朝日新聞社が主催した懸賞小説で、全くの無名の新人「三浦綾子」によって、病床で描かれ、三浦綾子はこの作品で、当時1000万円という賞金を手にした。この本は当時300万部を越える大ベストセラーで氷点ブームを起こす。

1960年代において全くの無名の新人が1000万円を獲得した!というのは当時大きな事件だったのです。

私が当時この1000万円の大賞を受賞した作品というのを知っていたのか覚えていませんが、きっと「氷点はすごい小説なんだ」という認識があったのでしょう。

いずれにせよ、今まで一冊も本を読んだことのなかった青年が手にした本は「氷点」だったのです。

活字離れどころか、活字と仲良くなったことのない人間がいきなり長編小説ですから、普通途中で投げ出したくなります。

でも、いきなり私はのめりこんだのです。
あまりにも面白く、あまりにも衝撃的な作品でした。

「あー本ってこんなに面白いものだったんだー」

これが僕の最初の読書感想だったと思います。私はこれまでの20年間一冊も本を読んで来なかったことを悔やみました。
小学校の頃から読書の魅力に取り付かれていた少年少女は20歳の頃には世界中の名作を読破しているハズなのです。

私の“失われた20年”を取り戻すべくいきなり私は「趣味は読書です」人間になったのです。

その後様々な小説を読んで来ましたが、私は「氷点」ほどの衝撃を受けた本に出会ったことはありません。
きっとこの感覚は、車を何台乗り繋いでも、「一番最初に買った車が一番思い出深い」というのと同じだと思います。

上梓されてから40年以上経っていますが、未だ色褪せない不朽の名作「氷点」を私は強くお勧めしたい。

この物語を「メロドラマみたいで嫌い」という人は少なからずいますが、この小説で問いかけられているのは「人間の原罪」という哲学です。

とても深い人間倫理であり、道徳なのです。
人間が生まれながらにして、背負っている「原罪」です。

人間は生きていく上で、自分を取り囲む全ての人に対して平等に優しさを与えることができなければ、自分の存在が人の幸せを奪うことも否定はできないのです。

とてもとても深い哲学があるのです。

三浦綾子、彼女はクリスチャンです。きっとそんなキリスト教の教えから来る哲学かもしれません。

読書の秋に「氷点」を読んで、人間の原罪とは何かを考えてみませんか?

h9701809 at 20:51│Comments(2)TrackBack(0)clip!小説 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by kiku   2005年10月30日 11:52
初めまして。こんにちは。
私のブログの記事とオートトラックバックされてて、こちらに来ました。大学生の私ですが、「氷点」読みましたよ〜。読後感は何とも言えない気持ちになりました。
私もお勧めの本です^^
2. Posted by ゆうき   2011年08月03日 14:24
5 あたしも氷点読みました(^^)/

中学生ですけどとっても考えさせられました!
あたしも誰かにとっては不幸な存在なんだと思うと悲しくなりました。

原罪ってなんだか難しいです_(^^;)ゞ

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔